大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)843号 判決

当裁判所は本件物件が本件特許発明の技術的範囲に属しないものであると判断するが、その理由は、次に附加するほか、原判決摘示の理由と同一であるから、これを引用する。

一 本件特許発明にかかる「計量ポンプ構造体」は、その明細書中、特許請求の範囲の記載によれば、単に原判決認定の構成要件中、(三)ないし(六)(原判決二一、二二丁参照)に定められたピストン、ピストン棒、レバー腕、枢結装置、モーターを備えた確動変位ポンプのみから成るものではなく、右ポンプを装着して容器の上に取り外し可能状に静置し、かつ、容器の上端と整合させ、また、右ポンプの入口を容器の底に隣接させることができる装置をも含むこと、したがつて、右構成要件中、(一)における「容器」は、「計量ポンプ構造体」の構成部材そのものではないにしても、その構成を特徴づける要件として欠くことのできない事項であることが認められるから、右「容器」の意味によつて、右特許発明の技術的範囲を定めることを非理であるとする控訴人の主張は失当である。

そして、これが本件特許発明において有すべき技術的意味について考えると、原判決説示と同様の理由により、右「容器」は、成分材料が入れられ、消費者が入手する容器であつて、その成分材料を計量、混合に供するに際して計量ポンプ構造体に取付けられ、空になれば、これから取り外されるものであることが認められる。したがつて、そのような容器の形態が右特許発明の実施態様にすぎないものでないことはいうまでもないところである。控訴人は、本件特許発明が、その目的に徴しても、従来の装置のいずれの型の「容器」にも取付けることのできる計量ポンプ構造体であるとして、その容器を限定する理由がないと主張するが右特許発明がその目的を達成するため、計量ポンプ構造体を取付ける成分材料の容器を前記のようなものに限定したものであることは原判決の説示のとおりであり、右認定を覆して控訴人の右主張を認むべき証拠はない。なお、前出甲第一号証によれば、本件特許発明の明細書中、発明の詳細な説明には「容器の大きさは5又は10ガロン入り容器のごとき比較的小容器から50又は100ガロン入り樽にいたるまで様々である。」、「計量ポンプ構造体は計量かつ混合され、かつ別々の容器又はドラム24と26に入れられて消費者に渡される成分と連通している。」との記載があることが認められ、控訴人は、これをもつて、右特許発明における容器に限定がないことの証左とするが、右記載において「うつわ」の意味に使われている用語が容器のほか、様々であり、また、その大きさも様々であるからといつて、右特許発明における「容器」に前記のような限定があることを否定することはできない。

次に、本件特許発明の構成要件中、(二)における「取り外し可能状」とは、原判決説示と同様の理由により、容器が代替的であることを前提とし、計量ポンプ構造体の取り外しを、通常の使用時において必要が生じた場合、本来的に可能にするような構造を指称するものであることが認められる。控訴人は、右特許発明においては、計量ポンプ構造体を取付ける容器に限定がないことに徴し、右構造体の保守、点検及び修繕等のため、これを容器から取り外すことも配慮されている旨を主張するが、前段説示から明らかなように、右主張は容器に限定がないとする点において既に失当であるから、採用に値しない。

二 本件物件の貯溜室は、原判決説示と同様の理由により、工場床面に固定設置されるタンク部を隔壁で区分したものであつて、本件特許発明における「容器」のように空になれば交換されるものでないことが認められる以上、原判決認定のようにポンプ機構部が固着された基台部がタンク部の上部にボルトで螺着されているからといつて、その結合構造をもつて、本件特許発明の明細書中、発明の詳細な説明に示された連結棒68と蝶ナツト72とが用いられた実施例と均等であるということはできず、またポンプ機構部の固着した基台部を、本件特許発明における構成のように、貯溜室ないしタンク部から「取り外し可能状」にあるものということもできない。控訴人はこれと容れない主張をするが、右認定を覆して控訴人の右主張を採用するに足りる証拠はない。

三 以上の次第で、本件物件が本件特許発明の技術的範囲に属することを前提とする控訴人の本訴請求はその余の判断をするまでもなく失当であつて、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却する。

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